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丹羽真一先生の講演を拝聴して⑶ ∼精神障害のリハビリテーション∼

更新日:2021年2月2日

みさんこんばんは。


今回で3回目となります。1,2回目の記事をご覧になりたい方は下記リンクからどうぞ。





【前置き】


1/27㈬ 福島県福島市にあるほりこし心身クリニックにて、福島県立医科大学精神科名誉教授である『丹羽真一先生』の講演を拝聴してきました。



丹羽先生は1972年に東京大学医学部をご卒業され、その後1992年まで東京大学医学部付属病院精神神経科の助手を経て、2012年まで福島県立医科大学医学部附属病院精神医学講座の教授を、また、福島県立医科大学医学部附属病院院長や福島県立医科大学理事などを歴任された福島県の精神医学界もとい日本の精神医学会のレジェンドといっても過言ではない方です。統合失調症の研究、とりわけ、精神疾患死後脳の研究に於いては世界トップレベルの研究をされているそうです。



ご講演のメインテーマは『精神障害のリハビリテーション



行政、医療、福祉、における精神障害者に対するリハビリテーションによるこれまでの歴史及びその効果、また、今後期待される新しいリハビリテーションの在り方、最後に将来の精神科医療の予想絵図をお話ししてくださいました。



とても大事なお話しだったので今回のシリーズは少し長くなってしまうかもしれませんがお付き合いいただけると幸いです。


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第三回『精神障害のリカバリー率とリハビリテーションの新しい技法



今回のテーマは「精神障害のリカバリー率とリハビリテーションの新しい技法」について書きたいと思います。




まず初めに、アメリカUCLAにおけるリカバリーの定義を見てみましょう。

(こちらは治療者側の視点になります)


症状が寛解している

就労あるいは就学している(B型作業所でもOK)

自立した生活をしている(親と同居していても経済的に自立していればOK)

社会的人間関係を維持している


これら4つの条件を2年以上維持し満たしていること



また、近年の日本ではリカバリーには①治療者視点(臨床的リカバリー)と②パーソナルリカバリー(当事者視点のリカバリー)の二つの側面があると言われています。


臨床的リカバリー(治療者視点)

 病状の改善・・・客観的

 機能の回復・・・機能発揮のでき方


パーソナルリカバリー(当事者視点)

 他者との関り・・・主観的

 将来への希望・・・本人の価値意識、充実感、満足感


近年では特にパーソナルリカバリーもリカバリーと言える




リハビリテーションを積極的に行っていない精神障害の臨床的リカバリー率(治療者視点)を見てみると、


統合失調症・・・・・平均16,4%(2017)

双極性障害・・・・・16∼43%(2007)

うつ病・・・・・・・32∼40.7%(治療開始後6ヶ月∼1年 2017)


上記リカバリー率はとても低い水準にある。リハビリテーションを積極的に行うことによってリカバリー率を高めたい

画像参照:NHK


上記は30年前のデータにはなりますが、薬物療法とその他の治療(リハビリテーション)の継続を行うことで再発率が劇的に低下することが示されています。






それでは次に精神障害のリハビリテーションの新しい技法に関して見てみましょう。


リハビリテーションに関する施設も利用者もここ10年で増えてきているそうです。


リハビリテーションの場である地域と職場における支援の届け方において、


地域で精神障害当事者の生活を支えるサービスの提供方法

 ・ACT(包括的地域生活支援センター) 全国にまだ20ヶ所程度


ACTとは・・・重い精神障害を抱えた人が住み慣れた場所で安心して暮らしていけるように、様々な職種の専門家から構成されるチームが支援を提供するプログラム。通常対象となるのは、統合失調症や躁うつ病などの精神障害を抱えた人たちで、治療によっても十分に改善されない重い症状や障害を持っていたり、そうした障害に関連した理由のために、既存の地域精神保健サービスから十分な恩恵を被ることが難しいといわれている人たちです。彼らは、精神科救急サービスの頻回利用者であったり、頻回入院者であったりします。また、長期にわたる入院を余儀なくされている人かもしれません。利用者の主体性を大切にするという考えから、ACTでは利用者の主張に基づいた支援計画が作成され、サービスが提供されます

画像参照:ポジティブメンタルヘルス研究所



就労と就労継続支援の方法

 Place then Trainという考え方・・・十分トレーニングを積んでから職場へ(今まで)

 職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援制度・・・現場で訓練をする(今後)



精神障害の基盤となっている脳機能・認知機能の障害を改善する試み

 認知矯正法認知矯正法とは考える注意する記憶するなどの認知機能の改善を目指すトレーニングのことを言います。 治療者によって様々ですが、紙と鉛筆を用いたドリルやコンピューターソフトを用いた手法、一文字戻りしりとりのような口頭行うゲームなどがあります)



精神科訪問サービス

精神科病院、精神科診療所、訪問看護ステーションで精神科訪問サービスを行う施設の増加

 ・精神科病院・・・1999年66.9% 2011年83.6%

 ・精神科訪問看護を行う訪問看護ステーション・・・2006年35.5% 2011年59.4%

 ・精神科病院・診療所の医療機関が行う訪問看護利用数

   2004年約2万2千人 2013年約4万3千人

 ・地域の訪問看護ステーションによる訪問サービス利用数

   2003年約7,500人 2013年約3万1千人


精神科病院および訪問看護ステーションと利用者の推移は右肩上がりで増加しており、入院主体から地域主体の足掛かりになっている



社会心理療法

 ・SST(ソーシャルスキルストレーニング) ・・・社会で人と人とが関わりながら生きていくために欠かせないスキルを身につける訓練

 ・家族心理療法・・・当事者の家族を対象とした心理療法

 ・デイケア

 ・作業所

 ・認知矯正法・・・前述参照





今回のまとめ


リカバリーの定義は治療者視点でのものと当事者視点のものがあり、近年では当事者視点のリカバリーも注目されている。


リハビリテーションを積極的に行っている当事者とそうでない当事者とではリカバリー率に大きな差が生じている。


入院主体の治療から地域主体の治療へ移行するための土台となる施設や認知矯正法などの新しい技法は近年増加している。(ACT(包括的地域生活支援プログラム)や精神科病院の訪問看護、訪問看護ステーションなど)





最後まで読んでいただき感謝いたします。




次回シリーズ4回目に乞うご期待!




ではまた!!




参考文献:『精神障害のリハビリテーション』福島県立医科大学・会津医療センター精神医学講座 丹羽真一先生

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