発達障害の一類型。
知的障害あるいは言語的コミュニケーションの障害を伴わない自閉症を指し、しばしば高機能自閉症と同じ意味で用いられる。しかし、精神疾患として定義されたのが1980年代と、比較的新しいため、いまはまだ分類・定義が明確に定まっているとは言えない。
2005年に施行された発達障害者支援法のなかでは、第2条で「『発達障害』とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されており、自閉症とは区別されている。
アメリカ精神医学会が作成した『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』に収載されている診断基準は次のとおり。
(1)対人的相互反応の質的な障害、
(2)行動、興味および活動の、限定的、反復的、常同的な様式、
(3)社会的、職業的、その他の領域における機能の著しい障害、
(4)著しい言語の遅れがない、
(5)認知の発達、年齢相応の自己管理能力、対人関係以外の適応行動、小児期における環境への好奇心において明らかな遅れがない、
(6)他の発達障害、統合失調症の基準を満たさない。
当事者は社会的に困難を抱えながらも、知的障害がなく、一般的なコミュニケーション場面では一見して障害とわかりにくい。そのため、1990年代には障害の一種として知られていたにもかかわらず、福祉行政の対象になり得ていなかった。
発達障害者支援法は、地域ごとに発達障害者支援センターを開設することや、乳幼児期から成人期まで地域で一貫して支援を受けられる体制をつくること、医療や福祉的支援の専門家を確保し当事者や家族を含めた関係者の連携をとることなどを盛り込んでいる。支援法の施行により、医師の診断に基づいて精神障害者保健福祉手帳を取得することが可能となり、精神障害者枠で就労することもできるようになった。
(石川れい子 ライター / 2010年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
Comentarios