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あるひとつの命の終わり (1600Words)



母の日で訪れていた弟家族をしり目に、彼女は一日中ほぼ寝た切りだった



時折、甥っ子たちが彼女と遊ぼうとしたが、



『今は元気ないからそっとしといてあげな』



と声をかけると、珍しくすぐに言うことを聞き、



『調子悪いの?』と聞き返してきた



少し前までであれば食事の時間になると、見えない眼とほとんど失われた嗅覚で、壁などにぶつかりながら食卓を探し出して食べ物をねだったものだ



その日は唐揚げ屋で買ってきたジューシーな唐揚げにさえ何の反応も示さなかった



父親が彼女の好物の煮干しを砕いて何とか少しだけ食べさせた



自力で立つことさえ出来なくなっていた



5/9㈪


完全に一日中寝た切りになり、食べ物も一切口にしなくなっていた



動物病院に連れて行き、点滴を受けた



熱中症にかかっていると言われた



福島市ではしばらく30℃近い暑い日が続いていたが、エアコンはまだ稼働していなかった



この時期は何気に熱中症に注意らしい



彼女はもう長くはないなと感じたが、熱中症がおさまれば・・・といちるの望みを抱いた



5/10㈪



完全に寝た切り、寝返りさえうてなくなった



手足拘束の経験がある私にとって、寝返りをうてない苦痛を少しは知っているつもりだ



定期的に姿勢を変えてあげた



痰を絡ませながら苦しそうに呼吸だけ続けていた



痰を絡ませながらの呼吸は苦しい



痰を吸引させてあげたかった



何年もの間、緑内障で大きく飛び出していた目が引っ込んでいた



目が引っ込んだ姿を見たのは何年振りか



5/11㈫


微かな呼吸をしているだけの状態になった



『今日が山かもしれない』と直感した



呼吸は続き、皆が寝る時間になった



寝ている間に逝ってしまうかもしれないという不安がよぎった



5/12㈭


朝6:00、私が一番最初に目を覚まし、恐る恐る彼女の様子を確認した



まだ微かに息をしていた



肺が少しだけ上下しているのが見えた



ホッとした



そして、母も起きてきた



「よく一晩乗り越えたな」と思った



『家族が寝ている間に逝きたくない』



そう思ったのかもしれない



あの虫のような息でよく一晩も・・・



私は彼女の背に触れ、体温を感じ、7:30バスの時間が近づいてきたので家を出る



家を出た後、一瞬、一回戻って彼女の頭を撫でようか迷った



だが、バスの時間が危うかったので出来なかった



仕事を終えて帰る18:30まで生きているか、正直厳しいと思った



5/12㈭ 9:53



母からのLINEで彼女が息をひきとったことを知る



火葬場のスケジュール的に本日中に火葬しないと一週間先になるので

これから火葬場に行くと



帰宅して分かったこと



彼女は私、母、弟と顔をあわせた後に、



珍しく寝坊して9:30に起きてきた父が彼女を撫でた直後、眠るように息をひきとったらしい



実際に彼女の面倒を見ていたのはほとんど父だった



全盲の彼女は散歩に出ることが出来なかったので、トイレはいつも庭だった



極寒の真冬の夜も、灼熱の真夏でも、彼女がトイレをしたそうな素振りをみせたら

外に連れ出して用をたすまで待っていた



というのも、家の中でされると目が見えないのでそれを彼女が踏んで

家中歩き回って大変なことになってしまう



お小水もきちんとした場所を見ていないと芝生がはげてしまう

かなり大変だったと思う



虫の息で一晩耐え、最も愛情を注いでくれた父親が起きてくるまで耐え、



最後、父親に撫でられながら召されたのは単なる偶然か



そうは思えない



同じ障害者として



彼女は生まれながらに虐待を受けていたところを保護され、保護犬としてうちにやってきた



虐待のトラウマからか、家族以外には誰にもなつかなかった



トラウマからか、恐ろしいほどに敏感で繊細な神経をもっていた



時々てんかん発作を起こし、4~5歳くらいで視力を失った苦労犬だった



同じ障害を持つ仲間として私は彼女に親近感を持っていた



でもうちに来てよかったなと自信を持って言える



家族みんなに愛されて育った



生まれ変わったら健康体で生まれて欲しい




さよなら



安らかに眠れ


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